レンズ交換式カメラとは切っても切れない「レンズマウント」の存在。メーカーごとに違うのはやむを得ないとしても、同一メーカー内でさえ時代の変化に合わせてマウントの規格を変えざるを得ないことが多い。特に1980年代のオートフォーカス化に合わせて、駆動カプラーや信号接点を追加するために大口径化したメーカーが多数見受けられた。確かにカメラの性能は格段に上がったが、それまでのレンズ資産が(アダプター等を介さない限り)基本的に使えなくなってしまい、ユーザー離れを生む一因となった。かといって、従来のマウントのままでは性能の向上が難しい一面もあった。
ニコンはこの両方を天秤にかけた末、「Fマウント」という規格を残す決断をした。当初はAFスピードが他社より遅い等のデメリットがあったものの、改良を重ねた現在は、遜色のないトップクラスの性能を勝ち取っている。それでいて「Nikon F」時代からのレンズが多少の制約はありつつも、最新のデジタルカメラに装着できるというのだから素晴らしい。ユーザーにとって"不滅のFマウント"と言われる所以がそこにある。
プロカメラマンにとって、カメラという道具は"まさか"があってはならない存在だ。どんな現場であっても動き続ける信頼が必要になる。
例えば、戦場やスポーツシーンなど報道の第一線、時に過酷な自然現象を相手にするネイチャー写真の現場。あらゆる状況に鍛えられてきたニコンの一眼レフは、それに応えるカメラと言える。堅牢なボディは、少々ぶつけたくらいではびくともせず、泣き言を一切言わず写真を撮り続ける。フィルムからデジタルに時代が変化しても、その見えない電気信号を確実に伝達・保存するための機能が備えられてきた。回路をショートさせない防塵防滴化や、メモリーカードへの保存を確実にするダブルスロットの採用など、技術の粋を惜しみなくつぎ込んでいるメーカーは数少ない。第一線で活躍するプロにとって、これからもなくてはならない存在である。
時代の変化とともに変わりゆくカメラの世界において、変わらなく作られ続けてほしいと思わせる、それがニコンの一眼レフカメラだ。
Text:Takanori HATTORI